La Becasse

In season

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4月の料理イメージ

ホタルイカのリエット

  • ホタルイカのリエット
  • この季節を彩る富山湾独特の食材。いかにフランス料理にするかがポイントです。和食ではからし酢味噌などでさっぱりさせて食べますが、ホタルイカを日本のジビエと捉えて、内臓の旨み、いい意味での臭みをフルに活かすためにフキノトウと合わせて丸ごとペーストにしています。姿のままボイルしたものではなく、その隣に置かれているペーストが主役です。そろそろ終わりかけている金柑のスライスが爽やかさを引き出し、ホタルイカの濃厚さだけでないスマートな一皿に仕立てたつもりです。
    季節のアスパラガスを添え、ブロッコリーのみじん切り入りのさっぱりとしたドレッシングを合わせています。

ホタルイモ~ヴァージョン1

  • ホタルイモ~ヴァージョン1
  • ジャガイモも今が新芋のシーズン。出会い物の組み合わせですが、誕生にはエピソードがあります。師匠の一人ジョエル・ロブションが来日したときにある女性誌が“ロブションに食べさせたい料理”という企画を実施しました。ロブションゆかりの10人ほどのシェフがそれぞれに料理を提案するのですが、全員がオマールエビのような高級食材を出してきたときに私一人がジャガイモでした。彼がジャガイモ好きということも知ってはいたのですが、肉ジャガの崩れかかったところの美味しさをどうしても食べてもらいたかったのです。それがコンセプト。
    それぞれ塩味でソテーするだけですが、十分に旨みが出ます。生のホタルイカの腹がはじけてちょうど肉ジャガの崩れたところを思わせるのです。今日は市場に生がなくボイル物しかなかったのでうまくはじけてくれませんでした。それでも味はピッタリ合っているはずです。キッチンに甲殻類のスープがあったので、それで少し味を深めています。

ホタルイモ~ヴァージョン2

  • ホタルイモ~ヴァージョン2
  • この料理はどのようにでもアレンジがきくので、古典的なエシャロットのクリームソースを合わせてみました。一晩のうちにも作るタイミングがずれると、食欲の方向が微妙にズレて異なった表現を取ろうとするのが私の料理です。
    そしてこの料理は元々魚料理の付け合わせでしたが、あるアメリカ人のお客様がイカの味のするポテト、ポテトの香りのするイカと褒めてくれたように特徴的で人気があり、独立した一皿に昇格しました。味があまりに一体化しているので赤塚不二夫のギャグ漫画に出てくるウナギイヌならぬホタルイモと名付けました。私のスペシャリテの一つです。

ホタテと筍 筍のすり流しとともに

  • ホタテと筍 筍のすり流しとともに
  • 筍もそろそろ近場のものが豊富に出回るようになりましたね。この季節にどうしても食べたいものの一つ。フランスにはない食材ですので和食の手法を真似ながら、フランス料理に置き換える試みをしてみました。
    筍のすり流しは筍の固い部分を摺り下ろして出汁に流したり、蒸し物にしたりといった応用範囲の広い料理です。この出汁をブイヨンに置き換えてソースとし、ボイルした穂先部分とサッと湯通ししただけのホタテ貝を合わせてみました。冷たい感触の中から筍の温かみのある風味と、ブイヨンのコク、塩コショーの刺激が立ち上がってくるでしょう。
    ほかにも季節の走りの筍と名残りのトリュフを合わせるのも私の好きな料理の一つです。

サクラマスのポワレ ラタトゥイユ添え

  • サクラマスのポワレ ラタトゥイユ添え
  • 桜が咲き始めると、サクラマスも市場に並び始めます。よく脂の乗った鱒だったのでシンプルにポワレにし、脂に合わせたくなる酸味としてラタトゥイユを選びました。
    私はズッキーニを主体にした“ズッキーニトゥイユ”とか、ナスを主体にした“ナストゥイユ”を作っておいて、後からトマトと合わせてラタトゥイユに再構築するのが好きです。それぞれその時々で水分量が違っていて味が決まりにくいので、再構築した方が楽。ちなみに今日の皿はトマトを使わず、ビネガーの酸味、パプリカの赤味を加えています。最近スペイン産のパプリカパウダーを使っていますが、これがかつお節のような魅力があり、気に入っています。

サツマイモのモンブラン風 菜の花のソルベ添え

  • サツマイモのモンブラン風 菜の花のソルベ添え
  • 3月の末に東京の「オテル・ド・ミクニ」で「ルレ・エ・シャトー」のイベントがあり“「アラン・シャペル」と「フレディ・ジラルディ(スイス初の3つ星レストラン「ジラルディ」元シェフ。’96年引退)」を偲んで”というイベントがあり、三国清三シェフとコラボしたときに担当したデセールです。「ミクニ」では向こうのパティシエの意見も入れてサツマイモはバターだけでクリームにしましたが、今回は生クリームも少し加えてより口当たり滑らかにしています。菜の花のほろ苦さとよく合っています。

サツマイモのモンブラン風 季節最後のトリュフ添え

  • サツマイモのモンブラン風 季節最後のトリュフ添え
  • 同じサツマイモのモンブランクリームにシーズン最後のトリュフをごく薄くおぼろ状にして振りかけてみました。トリュフに負けないサツマイモの包容力の大きさと、トリュフがデザートに合うことの2つに同時に驚かれることでしょう。
フランス料理はテロワールというものを大切にしています。直訳すれば郷土とか農地ということになりますが、料理においてはその土地特有の自然の恵みと解釈していいでしょう。今は輸送技術が進み、鮮度維持も驚くほど向上していますから、日本にいてフランス料理をするとき、すべて輸入に頼ってもできるようにはなっています。でも、それでは生活感のない料理を作ることになり、フランス人の創る料理のコピーをしているにすぎなくなるでしょう。
日本にいるからには日本のテロワールを活かすべきです。当然、和食で慣れ親しんだ食材を多用することにもなります。その時にいかにフランス料理のテクニックでその素材が持っている本来の魅力を引き出すと同時に、どれだけ自由に飛躍できるかがポイントです。
ホタルイカなどは居酒屋の突き出しメニューによくあるもので、とてもレストランの食材になり得ないと思われがちです。でもシャペルさんは鶏のサンカクという見向きされない部位を気に入って、斬新な料理に仕立てました。そういう人が見ないところに可能性を探るという師匠の精神に倣ったやり方です。それに素材自体も飛び切り上等のものを厳選しています。
リエットにすることで野性的な旨みを満喫できると同時に、金柑のスライスでエレガンスも表現できていると思っています。
それと日本の食材を料理する方法として和食に見習うべきところはたくさんあります。筍のすり流しもその一つ。こういう場合に注意したいのは、フランスの野菜料理は野菜の旨み(苦味なども含めて)が日本よりずっと濃いということ。和食の調理法は野菜の淡い美味しさを活かすための方法。筍が濃いだし汁にも負けない力があるから、すり流しでより風味を強調できるから可能なフレンチ化だということです。素材の強さの見極めと選ぶ料理法のマッチングを間違えたら美味しい料理は創れませんね。

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